赤字でも続ける理由。エンジニア社長が語る「コーチングの民主化」への想い
「コーチングの民主化の仕事は、全然お金になっていない」——そう正直に語るのは、ブライティー代表のなる。エンジニア出身でありながら、なぜ儲からないと分かっている個人向け(2C)のコーチング市場に挑戦するのか。その背景には、「僕じゃないとできない」という強い想いがありました。
なぜ「儲からない」個人向け市場を選んだのか
コーチング業界では、企業向け(2B)のサービスが主流です。上場企業も参入しており、しっかりとビジネスとして成り立っています。一方で、個人向け(2C)となると話は変わります。受けたいと思うクライアントの数もまだ成長段階で、価格帯も小さくなりがち。「2Cは全然儲からない」というのが現実です。
それでも代表のなるが個人向け市場を選んだ理由は明確です。「一言で言うと、僕じゃないとできないと思ったから」。コーチングが好きで、コーチングが正しい形で広まっていない現状を変えたい。その想いが、赤字覚悟の挑戦を支えています。
きっかけは「父親になる」という経験
コーチングの民主化を志したきっかけは、妻の妊娠でした。「パパになるんだ」という実感から、子供との関係性や関わり方を考えるようになったといいます。そんなタイミングで受けたグループコーチングが、あまりにも良かった。「やっぱり僕、コーチング好きだな」と再認識した瞬間でした。
ちょうどその頃、なるは一人でWebサービスを作れるエンジニアになっていました。「自分はずっとサービスを作り続ける人間」と定義している中で、どんなサービスを作るかは非常に重要。自分の情熱を注げるかどうかが鍵だと考えていたのです。
コーチング業界を調べて見えた「もったいなさ」
コーチング業界を調べてみると、驚きの連続でした。コロナ禍で多くの業界がオンライン化したにもかかわらず、コーチング業界はITがあまり進んでいない。市場も盛り上がりきっていない。エグゼクティブ向けや企業向けのコーチングは盛り上がっているものの、2Cで市場を作ろうとする会社はあまり多くない。
「もっと盛り上げられるのに」——そう思ってしまったのが始まりでした。エンジニアとしてITツールを提供していけば、少しでも市場を変えられるかもしれない。影響を与えられるかもしれない。「これは自分でやるしかない」と、サービスの開発を始めました。
「コーチングを知っているエンジニア社長」という希少性
コーチングを深く理解していて、かつエンジニアとして自分でサービスを作れる社長——そんな存在は、なる自身も聞いたことがないといいます。だからこそ、いろいろなトライアルができる。市場にいろんな投げかけをして、当たる・当たらないを繰り返しながら、少しずつ形にしてきました。
通常、エンジニアを一人雇うだけでも月75万円ほどかかり、年間で800〜900万円。2Cの市場規模を考えると、すぐに回収できる金額ではありません。だからこそ、自分自身がエンジニアであることが強みになる。「僕らだからできる」という背景がそこにあります。
自己資本で、受託と並行しながら
現在、ブライティーの開発はすべて自己資本で行っています。会社としてはITの受託開発も手がけており、特にスタートアップの0→1(ゼロイチ)フェーズをサポートすることが多いとのこと。そこで会社を成り立たせながら、余剰の時間をブライティーに注いでいく——そんなスタイルで「コーチングの民主化」を進めています。
チームメンバーもコーチングで変わった
興味深いのは、チームメンバーの変化です。関わってきたメンバーは、最初はコーチングを全然知らない人たちでした。しかし、ブライティーではコーチングのマッチングも行っているため、メンバー自身がクライアントとしてコーチングを受ける機会があります。
「コーチングのおかげで自分の方向性が見えてきた」「目標がいきなり言語化できた」——そんな変化が起きているといいます。今いるメンバーは全員、「コーチングいいよね、ちょっとでも広まったらいいよね」という想いに賛同して一緒に活動しているそうです。
メンバーの目標言語化を大切に
なるがメンバーと関わる際に大切にしているのは、彼らが望む方向性とチームの方向性がフィットしているかどうか。フィットしないと感じたら、無理に引き止めることはしません。「ミスマッチは相互にいい影響がないので、やめときましょう」と正直に伝えます。
チーム内には「プロダクトマネージャーとして成長したい」 「CTOになって経営も分かる状態になりたい」といった明確な目標を持つメンバーがいます。その目標を踏まえて、どんな仕事を任せるか、どう成長の機会を作るかをすり合わせながら進めているのです。
「好きなことをやろうよ」がメッセージ
なるが大切にしているのは「子供心を忘れずに」ということ。好きだからやる、好きなものをずっと仕事にしている状態が一番幸せだと考えています。24時間のうち8時間が嫌なことで埋まるのは「本当に嫌」だから、関わる仕事はすべて好きなものにする。
実際、週に何日働いているか分からないほど仕事をしているといいますが、それは好きだからこそできること。チームも同じマインドのメンバーが揃っており、プライベートでも仲が良く、「ずっと一緒に仕事したい」と思えるような関係性を築いています。
ITの力でコーチングを広めたい
「正直、ツールである必要があるかは分からない」となるは言います。しかし、ITだからこそできる環境の変化や影響力の大きさは確実にある。その力を使って、コーチングをより広め、より触れやすくしたい。
もし、これが完璧に実現されている会社があったら、なるは満足していたかもしれません。しかし、市場の難しさやハードルの高さから、そこに挑戦する会社は多くない。「僕らでないと進められない」——その志のもと、コーチングの民主化に向けて進み続けています。
